WEBコラム〈20〉コーディネーターとしての自治体職員の役割とTaSSKへ期待すること~多文化社会コーディネーター協働実践研修に参加して~

浅井 里依子(越谷市役所)

日本三大阿波踊りの一つである「南越谷阿波踊り」が開催される越谷市は、埼玉県の東南部に位置する中核市で、その外国籍市民数は2022年6月1日現在7,215人(総人口34万4,406人の2.09%)となり、ゆるやかな増加傾向が続いています。

私は国際化施策担当として在職6年目を迎えていた2018年に「多文化社会コーディネーター協働実践研修」を受講し、自治体施策としての地域日本語教育をテーマとして、思わず涙が流れるほど嬉しかったことからしばらく立ち直れなかったような失敗までをも含む、感謝してもしきれない多くの方々との協働による実践の報告を書き上げました。
参考:http://tassk.org/wp-content/uploads/2019/06/coordinator2018_asai-1.pdf 

多文化社会専門職機構(以下、TaSSKと記載)の研修の特徴はどこにあるのでしょうか。それは、「実践」と「省察」の積み重ねが求められることにあると思います。地域課題を解決するためには、何らかの手段を講じるしかありません。だからこそ受講者自身が実践することが重視されます。さらに、何度もディスカッションや対話を重ねることで、自身の実践を別の視点から見直す機会が続きます。そのうえで論文や報告の記述による言語化を通して、更に自身で深く俯瞰して客観的に省察することが求められます。実践と振り返りによる省察を積み重ね続け、課題を具体的に解決していく専門職としてのありかたを、TaSSKの研修では体得することができます。

自治体職員として取り組んできたことは、対症療法的なアプローチだけでなく課題解決型なアプローチにも視点を変え、問題の原因に着目し、それが事実かを確かめながら、対策を講じようとすることです。一方で、特定の分野(例えば地域日本語教育等)の専門知識を持たず、立場上現場で寄り添い続けることもできない“事務屋”としての課題解決に限界を感じていたこともあり、多文化社会において果たせる役割について模索し続けていました。そうした実践の期間中、協働してくださった中間支援組織のコーディネーターの一人は、私が抱える問題について「日本語教室の活動が試行錯誤で続けられており、学習支援者が自身の活動に漠然とした不安を感じている地域がある。行政がその不安を把握していても解決のためにどのような講座を展開すればよいのかわからない場合も多い。外部機関は、委託を受けて学習支援者研修を実施するだけでなく、担当者に伴走しながら、多文化共生のまつわる課題を解決していく行政等担当者を育成すること、および、学習支援の実践現場までをサポートすることが肝要である」と解決策を処方し、実際にずっと伴走しながら、多くのコーディネーターの方々ともに課題解決の一歩を進めてくださいました。こうした全力のバックアップを受け、私は、自治体職員として誰よりも地域課題に詳しくなることを目指し、地域で活躍する方々とつながり、地域のリソースを発掘しながらその声を聴き取り、実態を情報化することを実践しました。なぜなら、そうすることで初めて、専門家の知見と地域の実情の調整を図ることができ、効果的で意義のある協働による課題解決につながったからです。他の地域の誰よりも丁寧かつ詳細に地域の現状をデータと対話両面から引き出し、数値や文字化して共有できる状態にすることこそ、『地域の専門家』たる自治体職員に求められる役割だと実感しました。

深い専門知識や数多くの経験を有する中間支援組織や専門家を地域に招聘し、そのまま全てを託してお願いさえすれば、地域の課題が解決するわけではありません。地域の課題解決のために自治体施策は存在します。だからこそ、そもそもの課題が何か明らかにしながら、解決策としてなぜその施策や事業が必要なのか理由づけを行い、目標の設定を行うとともに絶えずその目標が誤っていないか検証し、必要に応じて目標そのものを修正しながら、事業を継続していくべきです。継続性を担保するのはもちろんのこと、自治体の全体計画との整合性をとる必要もあります。課題解決を目標としない事業の場合、むしろ現場のマイナスになる危険性さえあります。施策目標を決定し、事業の実施と成果の検証・見直しを行い、必要な予算を確保し、人事異動を重ねることで安定的に事業を継続し、地域の課題解決を目指し続けられることこそが行政の強みです。

外部の中間支援組織や専門家と協働で地域の課題解決を目指すなかで、地域の実情をデータ・実態両面から把握・分析し、適切な課題設定をする必要があります。また、当然ながら地域でともに暮らす方々との連携や協働は不可欠であり、理念を持ったうえで地域の未来像を地域で共有する基盤をつくり、関係者を巻き込みながら進んでいくという実践が必要です。「誰も置き去りにされることなく、誰もが力を発揮することのできる」多文化社会の実現に向け、自治体職員には、そのような政策分野を専門とするコーディネーターとしての役割が求められています。TaSSKの協働実践研修を通じて、職種として『政策』分野の専門性を有すべき自治体職員が、これからも自分たちのまちの課題解決に向け、実践と省察を重ねていってほしいと願っています。〔注:TaSSK設立趣旨より〕

2022年07月07日 | Posted in TaSSK/WEBコラム, お知らせ | | Comments Closed 

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