WEBコラム〈27〉PTAの活動を通して感じた地域の多文化共生の可能性
PTAの活動を通して感じた
地域の多文化共生の可能性
江崎 章子
鹿沼市国際交流協会
鹿沼市国際交流協会の職員として勤務し19年目の2020年にTaSSKの「多文化社会コーディネーター協働実践研修」に参加しました。研修を通じてそれまでの取り組みを省察し、まとめる中で、国際交流協会と教育委員会の連携強化を進めるだけでなく、外国人住民が持っている力を発揮し、地域で活躍できるような仕組みを考えていきたいと思うようになりました。しかしその後は日々の業務に追われ、つながりを作ることの難しさを感じる日々でした。
そんな中、2022年度から息子の通う小学校のPTAの本部役員を引き受けることになりました。PTA役員の活動も詳しく分からず、「本部役員」なんて務まるのかなと少し迷いましたが、もともと学校という場所が好き、学校の様子も分かる、できることがあるならやってみようかな、なんとなく楽しそうだし、という軽い気持ちで(と書くと申し訳ないですが)活動に関わることになりました。
PTAの活動に関わるようになってまず感じたことは、PTA役員には熱心な人が多い、ということでした。この熱心さは仕事で関わる多文化共生分野のボランティアの方々と重なるものです。「外国人住民のために」が「子どもたちや学校のために」に置き換わったと言えるでしょう。
コロナ禍で様々な制約がある中でイベントを企画する際にも、学校とPTAの双方が「子どもたちのために何ができるか」を考えながら意見を調整し、実行していく様子は、行政とボランティアが「外国人住民のために」を考えながら連携を図っていくことと同じなのでは?と感じました。
また、PTA役員のメンバーには地域の活動に関わる人が多いことも分かってきました。保育士、幼稚園の役員、中学校や高校でPTAに関わっている人、自営業で地域に根付いた仕事をしている人、消防団員で自治会長や民生員ともつながりが強い人など。息子の小学校には外国人児童は数人在籍しているものの、当初私はPTAの活動と地域の多文化共生をあまり結び付けて考えてはいませんでした。しかし、これまで国際交流協会としてつながりたかった人たちがここにいる!このPTAの力や実行力を地域の多文化共生の推進に生かせないか、と考えるようになったのでした。
とは言え、PTAのメンバーに多文化共生の話や外国人住民の話をする機会も無く、活動を続けていたのですが、やがて少しずつメンバーの方から私の仕事や外国人住民について質問をされることも増えてきました。これまで外国人住民と接する機会はかならずしも多くないと思われる中で、興味を持って聞いてくれることは嬉しい驚きでした。
先日、地域の安全等について話し合う会議の際、少しだけ地域の外国人住民や市の取り組みを紹介する機会をいただきました。この会議にはPTAや学校関係者だけでなく、地域の自治会長、民生委員、育成会の会長等、地域のキーパーソンといえるメンバーが多数参加していたのですが、地域の外国人住民の人数や国籍などは知らない方も多く、熱心に聴いてくださっている様子が印象的でした。
会議の後には、「外国人住民のことを聞けて良かった」、「学校を会場に開催する夏祭りには、地域に住んでいる外国人にも来て、「日本の夏」を楽しんでほしい」、「登校中にすれ違う小学生と挨拶できる関係になるといいよね」、「外国人住民は若い人も多いようだから、消防団に入ってくれるといいよね」、など嬉しい意見を聞くことができました。
すぐに実行できそうなこともあれば、形にしていくのは難しいこともありますが、少しずつでも地域とのつながりが生まれてきたことは喜ばしいことです。
鹿沼市のような外国人散在地域では、日本人と外国人の「近さ」が強みだと思います。地域に理解者(仲間)を増やし、地域全体で外国人住民をサポートすることで、彼らが地域で活躍できるようになる日もそう遠くないのではないか。楽観的かもしれませんが、PTAの活動を通じて大きな可能性を見出すことができました。
今後も地域の方の力を借りて、一歩ずつ地域の多文化共生を推進していけたらと思います。