WEBコラム〈19〉若者のための多文化共生入門ー地方都市における多文化共生の地域づくり

斉藤 雄大

一般社団法人 多文化社会専門職機構 会員
特定非営利活動法人 ESUNE 理事・事務局長
 

私は学生時代、愛知県豊橋市の外国人住民が集住する団地で、外国にルーツを持つ児童・生徒の学習支援教室でのボランティア活動を行なってきた。社会人になってからは、静岡県掛川市のNPO法人掛川国際交流センターの主催する大人向けの日本語教室をはじめ、多くの地域の日本語教室を見学し、ボランティアとして参加してきた。

地域の日本語教室に参加すると、外国人は技能実習などで来日している20代が中心であったが、学習支援するボランティアの中心世代はその親世代の方が多く、20代の私が教室に参加すると珍しがられるということが度々あった。しかし、そういった珍しさもあってか、日本語教室に参加している同世代の外国人とは自然と仲良くなり、日本語教室の参加を通じて、多くの外国人の友人をつくることができた。時には彼らのアパートでの食事会に参加し、そのまま泊めてもらうこともあれば、私が車を出して買い物を手伝うこともあった。また、彼らが帰国した際には、私が彼らの国を訪問し、ホームステイさせてもらうこともあった。そこでは、彼らに日本語で案内してもらい、現地の暮らしの様子を知ることができた。

このような身近な外国人との交流を通じて、私はつぎの2つのことが得られたように思われる。
1つめは、彼らに日本や私が暮らすまちについて説明する機会がしばしばあるのだが、そのことを通じて、私が日本人であることや、私が暮らすまちの市民としての当事者意識が自然と高まったことである。
2つめは、観光地ではなく、彼らの地元での日常的な暮らしを体験させてもらうことで、もしも自分がこの国・このまちで生まれ育っていたら、という想像できるようになったことである。
私のような地方都市で暮らし、語学力も持たず、海外と関りの深い仕事をしているわけでもない者が、広い視点から自分のまちや暮らしを見つめることができる視点を得られたのは、紛れもなく、日本語教室で出会った友人のおかげであり、感謝をしている。

そして、このような経験を、私だけの特別な経験として留めることなく、多くの若者に同じように経験をしてもらいたいという思いもあり、私が所属するNPO法人ESUNEでは現在2つの活動に取り組んでいる。

1つは、2020年9月より始めた「オンライン日本語サロンいろり」(以下、いろりと省略)である。いろりでは、オンラインで日本語での会話・交流活動を毎週水曜日と土曜日の夜に、大学生ボランティアスタッフを中心に運営している。大学生はコロナ禍で海外に行けない中で国際交流の機会を求めて参加し、一方で外国人は日本語学習機会として参加するが、回を重ねて交流が深まってくると、日本人・外国人の別なく、同世代の友人と気兼ねなく会話を楽しんでいる様子が見えてくるところが興味深く感じている。

また、その中でオフラインでも交流できる機会をつくりたいという想いから始めたのが、もう1つの取組みである「いろりの畑プロジェクト」(以下、いろりの畑と省略)である。
いろりの畑は、参加者が静岡県掛川市の西郷地区をフィールドにし、誰もがそこでの過ごし方を見つけられる「畑」を作るプロジェクトとして、2022年4月より活動を開始した。
農地は、いろりの活動に理解のある農家の協力を得て共同利用させていただき、一緒に野菜を育てたり、畑でご飯を食べたりといった活動を行なっている。まだ始めたばかりの活動ではあるが、ベトナム出身の参加者には幼少期に農業を手伝っていた経験のある人が多く、懐かしいといって作業をしたりしている。またいろりのメンバーだけでなく、近隣地域の住民にも関わってもらうことで新しい人のつながりも生まれ始めている。

オンラインでの活動、畑での共同作業、参加者どうしでの食事などを通じて、身近な日本人と外国人どうしが交流を深め、友人を1人でもつくることができれば、決して肩肘を張らずとも、自然なかたちで、「多文化共生社会」の実現に一歩近づけることができるのではないか。そのような思いで日々の活動に取り組んでいる。

特定非営利活動法人ESUNE(エスネ)
 https://www.esune-social.jp/
いろりの畑公式note
 https://note.com/irori_field/n/n998db4294822

2022年05月23日 | Posted in TaSSK/WEBコラム, お知らせ | | Comments Closed 

関連記事