WEBコラム〈15〉難民的背景をもつ人々とともに学ぶ “Something”

難民的背景をもつ人々とともに学ぶ “Something”

松尾 慎

多文化社会コーディネーター
Villa Education Center(VEC)代表理事 
東京女子大学 教授

 わたしたち(VEC)は、毎週日曜日の午前中、高田馬場の古くて少し狭いアパートの一室で、ビルマ・ミャンマー出身の難民的背景をもつ人などとの日本語活動をしています。この活動は、2014年の6月に難民当事者のチョウチョウソーさんらとともに立ち上げました。以来、毎日曜日に活動を続け、2022年1月末で324回を数えました。
 どのような学びの場であっても、出自や思想・信条、言語、性別・性自認・性的指向、宗教、年齢、障がいの有無などにかかわらず誰にとっても安心、安全に学べる場作りが必要です。難民的背景を持つ人を対象にした日本語学習の場作りを考えたとき、安心、安全という観点は本当に大切です。参加者の中には安定した在留資格をもっている人もいれば、そうではなく不安を抱えながら生活をしている人もいます。また、2021年にミャンマーで起こったクーデター以降、在日ミャンマー人の間では、互いがどのような立場に立っているのかわかり合えなければ自分自身の考えをはっきり話すこともむずかしくなっています。このような事情もあり、わたしたちの日本語活動は、ある意味でだれに対してもオープンに、またある意味で慎重に活動をすることが必要な状況です。
 わたしは日本語教育を専門としています。ブラジルやインドネシア、台湾で12年ほど日本語教育に関わり、現在は、大学で日本語教員の養成をしています。この活動にも日本語教育を学んでいる大学院生や学部生がファシリテーターとして参加しています。わたしは彼女たちに単に教室で上手に文型や語彙、漢字を教えられる教師になってほしいとは思っていません。それも大切な技術ですが、もっと大切なことがあると考えています。東京女子大学の第2代学長の安井てつ(1870~1945)は、キリスト教精神がかもしだす東京女子大学の学びの雰囲気を“Something”と呼んで大切にしたそうです。VECは「学習者」も「ファシリテーター」も「ビジター」もだれもが“Something”を得られる場だと思っています。その場作りこそが多文化社会コーディネーターとしてのわたしの役割です。まだまだ成長途上のわたしですが、1回、1回の活動を大切にしていきたいと思っています。
 VECの活動にどんな“Something”があるのか(ないのかもしれません)この目でこの心で確かめてみたい方、いつでもご連絡ください。ご参加を歓迎いたします。ミャンマーにふたたび自由と民主主義の灯火が照らされる日々が早くおとずれることを願って。

以下から問い合わせができます。活動の様子もわかると思います。参考までに。
https://villaeducationcenter.webnode.jp/
https://www.tokyo-np.co.jp/article/65028

2022年01月20日 | Posted in TaSSK/WEBコラム, お知らせ | | Comments Closed 

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