WEBコラム〈10〉弁護士会の外国人事件対応・最前線
弁護士会の外国人事件対応・最前線
関 聡介
多文化社会専門職機構 監事/ 弁護士(東京弁護士会)
2021年は「コロナ」とともに明けました。改めまして、皆様には本年もよろしくお願いいたします。いつもとは全く違う”新しい日常”の中で皆様との関係性もどのようになって行くのか、正直わからないことだらけですが、個人的には「不自由な生活の中に、少しでも自由を見出す」ことをモットーに、工夫を凝らしつつおかげさまで元気にやっております。
さて、私はTaSSKでは監事を務めておりますが、本業は弁護士で、縁あって四半世紀にわたって外国人事件への対応を続けて来ました。その関係もあって、日弁連(日本弁護士連合会)では、外国人事件対応力の強化というテーマでの活動が多くなってきており、これはコロナ感染拡大下においても、中断されるどころか、むしろ注力すべきテーマになっています。
そこで、今回のコラムで、外国人の方々等へ向けた弁護士会の最近の対応について、少しご紹介したいと思います。
ワンストップセンターとの連携
2019年4月、法務省入国管理局が出入国在留管理庁(入管庁)に改組されました。それとともに、新たな外国人労働者受入れ施策(「特定技能」資格新設など)が開始されました。
これに伴う「総合的対応策」(http://www.moj.go.jp/isa/policies/coexistance/nyuukokukanri01_00140.html)の一環として、全国各地に「多文化共生総合相談ワンストップセンター」の設立が進められていることは、皆様もご存知かと思います。
ただ、このワンストップセンターは、必ずしも法律相談機能が組み込まれているわけではない制度設計になっていたことから、日弁連が各地の弁護士会に呼びかけ、地元のワンストップセンターに積極的に関与するような流れが次第にできつつあります。具体的には、ワンストップセンターに外国人法律相談事業を実施してもらってそこに弁護士を派遣するといった形で行われていることが多いです。ぜひ皆様の地元の動きにご注目いただければと思います。
通訳名簿についての連携
刑事の当番弁護士制度や法律相談事業は、全国各地でくまなく実施されています。とはいえ、実際の運営は各都道府県の弁護士会がローカルルールに従って行っているのが実情です。
通訳人名簿も実は同様で、各弁護士会が目的別にバラバラに作成・管理していますが、各会の能力には限界があります。そのため、少数言語の通訳人などの情報を近隣地域間で共有する意義は大きく、関東弁護士会連合会管内(=東京高裁管内=関東甲信越+静岡)では、ようやく少しずつ通訳人名簿情報の共有の動きが始まったところです。
他方で、オンライン通訳や通訳会社による遠隔サービス、さらにはAIを活用した通訳・翻訳も急速に発展していますので、それらの活用も課題です。
そして、この流れの中でTaSSKが果たすべき役割も大きいと感じています。
外国人事件の受け皿弁護士の育成
弁護士の人数は近年急増しています。私自身は1993年登録ですが、その時点では全国の弁護士登録数は1万4000人余りであったのが、現在は約4万1000人となっています(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2019/1-1-1_2019.pdf)。25年余の間に3倍の人数となり、一部で過当競争も問題となってはいるものの、その分、従前は担い手の少なかった外国人事件の分野にも、若手を中心に相当な人数の参入が目立ってきました。外国人事件に関する弁護士の任意団体LNF(外国人ローヤリングネットワーク/https://www.lnf.jp/)も、今や全国に会員弁護士1600人以上を擁する団体に急成長し、全国の全ての弁護士会に会員が存在する状況となっています。日弁連は、これら若手弁護士の事件対応力の底上げを図るべく、外国人事件関係のEラーニング(オンライン研修)教材を多数用意して会員に無料提供していますし、LNFは毎月会員弁護士向けのゼミを実施(コロナ感染拡大下ではzoomで実施)するとともに、マニュアル書籍の出版も行っています(http://www.genjin.jp/book/b530092.html)。
以上、簡単ではありますが、弁護士を中心とした外国人対応の動きをご紹介いたしました。入管法の改正も近々予定されているようですので、その対応も含めて、今後も弁護士会の動向にご注目いただければ幸いです。