WEBコラム〈16〉外国人による外国人支援 ~多文化共生マネージャーとして~

外国人による外国人支援 ~多文化共生マネージャーとして~

山浦 育子

NPO多文化共生マネージャー全国協議会 理事
一般社団法人 多文化社会専門職機構 理事
一般社団法人 多文化共生コスモ越谷 理事


「失礼ですが、あなたは外国人?出身はどちら?」20数年前に公園で子どもを遊ばせていた時、声をかけられました。話しているうちに、越谷市にある日本語サークルにアシスタントとして参加するようになり、この出来事は私がボランティア活動のきっかけとなりました。その後、埼玉県内小中学校の国際理解授業に携わるようになり、県国際交流協会の中国語相談員になりました。2007年には荒川区の国際交流推進員として採用されました。主に中国語の翻訳及び通訳、海外交流都市との事業調整に関すること、国際交流協会に係る事務に関することを担当しています。

2010年、東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター(当時)主催のコミュニティ通訳講座を受講し、法律相談の通訳など携わりました。2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。当時、私は帰宅難民となり、日本語には全然問題のない私でも大変な思いをしたので、他の外国人はもっと大変なのではないだろうかと思い、災害時外国人支援も取り組むようになりました。

自分の得意分野をどう活かすか、15年間協会で勤めて、少しずつ見えてきたものがあります。私が取り組んでいる事業をご紹介したいと思います。

通訳者派遣事業
多文化共生マネージャーの研修を受けて、地域のニーズに合わせた支援を考えて、保健所と連携することを決めました。母親学級、赤ちゃん訪問、乳幼児健診時に通訳者を派遣します。そのため、通訳・翻訳ボランティア養成講座も開講し、登録制度も設けました。現在、約80名の方が登録しています。毎年通訳・翻訳ボランティア勉強会も開催しています。

地元での活動
この15年間自宅と職場を往復するばかりの生活になり、地元との接点がほとんどありませんでした。地域に住んでいる外国ルーツを持つ人間として、地域にも何かしら貢献したいという気持ちがずっとありました。
2021年1月に仲間と一緒に「一般社団法人多文化共生コスモ越谷」を立ち上げました。この団体は様々な国籍や多様な文化を背景とした人々と共に安心して暮らせる地域作りを目指しています。
 ホームページ: https://www.tabunka-kosumo.or.jp/

6月に「コロナ禍における世界の人々の暮らし、外国の人の声を聞いてみよう」と題して、研修会を2回開催しました。新型コロナウィルスの感染の終息が見えない世の中ですが、他の国の状況はどうなっているのか、海外に住む人のリアルな声から、それぞれの国の「現在」の様子を知ることができました。

「東武よみうり」(2021年6月15日)掲載記事

7月、8月、9月に多文化サポーターを対象に「多文化共生社会」を考える講座を開講しました。その第1回の内容を少し紹介すると、①お茶が入りました ②お茶を入れました。日本語として正しいのはどちらだと思いますか?このように普段何気なく使っている日本語も、実はよく意味を考えるとニュアンスで伝わってくることです。第2回はやさしい日本語が生まれてきた背景、歴史を紹介し、演習も行いました。そして第3回はやさしい日本語で伝えるとき、①自分が伝えたいことを明確にする ②少し強い言い方でも、はっきりと伝える ③相手の日本語力に合わせるということが大事であることを実際に例文作成を通じて学びました。

12月30日には留学生と高校生の異文化交流会をオンラインで開催しました。新型コロナの影響で国を超えての移動が困難となり、国際交流の機会が少なくなっている中、海外に関心を持つ高校生、新型コロナの影響で長期にわたって帰国できない留学生や、年末年始に故郷に帰れず寂しい思いをする留学生と交流の場を提供しました。(※なお、この交流会は『(公財)中島記念国際交流財団助成』(独)日本学生支援機構留学生地域交流事業の助成金事業として実施しました。)

また、2021年10月より、かめのり財団の補助金事業を採択されて、コロナ禍でワクチンサポート事業と就労サポート事業を実施することになりました。
埼玉県東部、東京都在住外国人に「ワクチン」と「就労」についてアンケートを実施しました。目標とした回答数は500でしたが、452を回収しました。
アンケートを丁寧に分析し、「コロナ感染症相談会」と「特定技能ビザ取得の説明会」を開催する予定です。この事業は6月まで続く予定です。

様々な事業を取り組んでいる中、地域のつながりが大事ということを実感しています。これからも地域の外国人とつながって、サポートしていくつもりです。

多文化共生コスモ越谷の仲間たち
2022年02月25日 | Posted in TaSSK/WEBコラム, お知らせ | | Comments Closed 

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