認定者からのメッセージ

相談通訳者

石塚英子(いしづかひでこ)/ 英語  2023年認定 

アメリカとフランスに駐在していた際に、現地で大変お世話になった経験から、日本に駐在する外国人社員とその家族を支えてきました。また、国際交流協会では通訳・翻訳と学習支援、自治体では防災と観光の分野で語学ボランティアをしています。
一方、多文化共生コーディネーター研修で学んだり、専門家リレー相談会で通訳ボランティアをする中で、昨年相談通訳に出会いました。そして、日本語で請け負っている相談員の仕事で培う様々な知識と経験が、相談通訳にそのまま活かせることに気づき、相談通訳を目指すことにしました。
今回相談通訳の認定をいただいたことは大きな喜びであり、相談通訳の分野で本格的に活動していきたいという思いを強くしています。

長年の外資系企業勤務、国際交流協会・自治体などでの通訳・翻訳ボランティア、相談員業務

岡山朋可(おかやまともか)/ 中国語  2023年認定 

   私は、中国から日本に来て二十五年になります。
  3年前のコロナ禍により、国分寺市では外国人支援事業を強化するため国際協会に対して通訳、翻訳事業を委託しました。
  今、私はその事業を国際協会の臨時職員として担当しております。昨年、相談通訳認定試験の情報を知り、チャレンジしてみました。まだ経験が浅いのですが、微力ながら、地元外国人のために何か役に立てればと思っています。

所属:国分寺市国際協会事務局臨時職員(通訳翻訳担当)、立川市自立支援通訳、CEC、国分寺市教育委員会派遣日本語指導

 

朱 思穎(しゅしえい)/ 中国語  2023年認定 


 若い頃に留学生として日本で生活していました。 帰国後、日本語を活かし、長年に旅行会社で訪日旅行業務を中心に、観光とビジネス客 としてよく日本に訪れており、滞在中にいつも温かいおもてなしに感動されていました。 2018年家族の都合により日本に移住し、生活者として日本で生活を始めてから、多くの 外国人生活者と同じように日常生活、子育て、子の転学や言葉の壁など様々な面で困難に 直面していました。 人の役に立ちたい、私自身が外国人であることを強みとして捉え、地域でボランティア 活動をしながら、2020年から外国人支援の仕事を携わりました。
 自治体で外国人生活相談員、保育所で外国ルーツ園児対応、学校で外国ルーツ児童生徒 学習支援など勤務経験を通じて、相談と対応内容が多岐に渡ると実感しています。言語の 通訳に留まらず、相談通訳者としての技術、専門知識、態度/マナーが不可欠であること を感じました。 ホスト社会につなげる「橋渡し役」を常に専門性の向上に努めたいと考え、認定試験を 受けました。自身の能力と専門性を高める機会を得られたことに感謝しています。そして 相談通訳が専門職として社会に認知されることを期待しています。

千葉市国際交流協会 生活相談員中国語を担当、市の保育所と学校での外国人児童生徒の教育相談員を務める。

 

宇塚 れおん(うつか れおん)/ ミャンマー語  2022年認定 

 在日先輩外国人は思いがけず後輩たちからの相談に向き合わなくてはならないことがあります。長年それらの相談を聴いていると、何とか助けてあげたいというボランティア精神が高まる一方、本来実施するべきエンパワーメントの視点を忘れてしまいがちです。私もその中の一人でした。
今回、「相談通訳認定試験」の準備の一環で、「これだけは知っておきたい!外国人相談の基礎知識」という本を読んで、公的な制度や法律の勉強になったのはもちろん、マイノリティーに対する理解が不足していると実感しました。また、自分では優しい相談通訳員だと思っていたのですが、外国人相談事業におけるコミュニティ通訳者の責任を果たしていないことに気づかされもしました。
 これから、「相談通訳認定試験」の準備にとどまらず、マイノリティーが法の下に暮らすために、また相談者自身のエンパワーメントを通じて、両国の架け橋になろうと決心しています。

サクラグローバルホールディング株式会社 海外プロジェクト課所属

Subarna Lata Tuladhar/ ネパール語  2020年認定 

私はネパール人両親のもとに生まれ、育ちました。母がネパールで日本語学校の先生、日本人観光客ガイド、通訳、翻訳をしていた関係で、私は子供のころから日本語を耳にする環境で育ちました。22歳のときに留学生として来日しました。留学生時代からネパール人コミュニティのために通訳、翻訳をしてきました。社会人になってからも通訳、翻訳を副業として続けていましたが、2007年に通訳者としての基礎やマナーを勉強する機会に巡り合いました。その後、2020年に相談員としてデビューしました。通訳者と相談員は別の立場であり、役割が異なります。しかし、その違いを意識することは少ないと思います。少数言語の通訳認定試験がない中、「相談通訳者認定試験」は相談通訳者としてのスキルを測る良い機会です。「認定者」になれば自信につながります。また、認定者が増えていくことで価格より質にこだわる社会に変わって行くと思います。質を重視する社会になれば、通訳をメインの仕事として生活をできるようになって行くと期待しています。

一般財団法人東京都つながり創生財団東京都多言語相談ナビ職員

伊藤 ゆり(いとう ゆり)/ ポルトガル語  2019年認定 

来日当初は日本語ができず、困った経験が多かったのですが、常に誰かに助けていただいたことから自分もそういった方々のお役に立ちたく、通訳になりました。
主に教育現場での支援を行ってまいりましたが、言葉をそのまま伝えるだけではなく、時には相談に乗りながら相手に寄り添うことも多く、多方面でのケアをすることが多いです。そのため、私は語学の知識だけではなく、いろんな国の文化や心理学の勉強にも力を入れています。 これからも一人でも多くの方が自分の気持ちを伝えられるように精進してまいります。

来日当初は日本語ができず、困った経験が多かったのですが、常に誰かに助けていただいたことから自分もそういった方々のお役に立ちたく、通訳になりました。
主に教育現場での支援を行ってまいりましたが、言葉をそのまま伝えるだけではなく、時には相談に乗りながら相手に寄り添うことも多く、多方面でのケアをすることが多いです。そのため、私は語学の知識だけではなく、いろんな国の文化や心理学の勉強にも力を入れています。 これからも一人でも多くの方が自分の気持ちを伝えられるように精進してまいります。

小学校6年生の時にブラジルから日本へ移住。教育現場・一般企業・フリーランスでの通訳や翻訳業務を行う。

岡田 シモネ 梨香(おかだ しもね りか)/ ポルトガル語  2019年認定 

30 年前に、来日した当初は言葉ができなかったため、困った場面が色々ありました。特に社会保険や労働、 教育などの制度が分からず利用できなかったことが多かったです。 現在、浜松国際交流協会の職員としてこれまでの経験を活かして外国人からの生活相談を受け、行政相談、法律相談などの通訳も行い、言葉の壁により不利な立場におかれる外国人を減らすために努めています。通訳については専門的な教育を受けていないので、正しいやり方で行えているか不安を抱えたまま業務を行ってきました。
外国人の定住化が進む中問題がより複雑になってきたことから、一層質の高い知識が求められることを感じ、相談通訳認定試験を受けることにしました。 試験に合格したことで、これまでの仕事を確認でき、自信を持って前に進むことができるようになりました。もちろん、引き続き自分のスキルを磨かないといけないことを承知していますが、より一層困っている外国 人を支えたいと思う気持ちが強くなりました。 
今後も一般社団法人多文化社会専門職機構においては相談通訳認定者を増やして外国人が暮らしやすい社会を実現できることを願っています。 

浜松国際交流協会(HICE)相談事業コーディネーター


奈須 清美(なす きよみ)/ 中国語  2019年認定 

92年に中国上海から来日しました。5年目の時偶然練馬区役所で外国語ボランティア登録の募集を見て登録しました。そのことがきっかけで、ボランティア活動から始めました。その後多文化情報支援員、外国人相談員となり、多文化共生活動に携わってとてもやりがいのある仕事と感じました。
活動しているうちに、通訳のスキル、相談員の知識をもっと高めたいと思いました。その時、偶然役所で相談通訳者認定試験のことを知り、チャレンジしようと思いました。認定試験に合格し、「認定者」になって自信になりました。これからも、在日外国人のために橋渡しの役割を果たせますように。もっと努力していきたいと考えています。

練馬区役所 地域振興課事業推進係 外国人相談窓口 相談員、練馬区多文化情報ひろば 支援員


濱屋 伸子
(はまや のぶこ)/ 中国語  2019年認定 

学生時代に中国語と出会い今に至ります。(公財)京都市国際交流協会の職員として通訳や相談業務に関わる経験があったことで、通訳者の役割や相談員の立場との違いなど、コミュニティ通訳の奥の深さに気づきました。そして、それが試験を受けるきっかけになりました。
通訳をする際には、何よりも「正確さ」が重要で、相談員という立場では「親身になって話を聞くこと」が大切だと常々思っていますが、それは簡単なことではありません。認定試験を受けて、改めてその難しさを実感したことを覚えています。
その人が、自分の言葉で自分の気持ちをしっかり伝えられるための言葉や文化の橋渡しの役割を、「正確に、親身に」果たせるように、これからも努力していきたいと思っています。

(公財)京都市国際交流協会の職員として、コミュニケーション支援や情報提供に関わる。中国に魅せられて35年。お隣の国、中国の面白さや奥深さを、日本人にもっともっと知ってもらいたいと強く願っている。

平田 イヴィ/ ポルトガル語  2019年認定 

小学校4年生で来日した直後は、全く日本語がわからず、これまで多くの方に助けていただきました。今度は自分が誰かの役に立ちたいと思い、現在の職に就いています。
ポルトガル語と日本語、両方の言語を理解し、話すことはできるものの、はたして「通訳者」と名乗ってもいいのかな、と悩んでいたときに、この認定試験に出会いました。認定試験に合格したおかげで、漠然としていた自分の立場が認められたように感じました。
今では精度の高い通訳翻訳アプリが多く普及していますが、やはり人対人にしか感じられない言葉のニュアンスや生まれ育った文化背景の理解があります。だからこそ社会に認められる専門職として、より多くの方にコミュニティ通訳の必要性を認知してもらえることに貢献できれば嬉しいです。

公益財団法人京都市国際交流協会 事業課に所属。市役所のポルトガル語通訳者としての勤務を経て、現在は(公財)京都市国際交流協会の職員として、行政通訳相談事業・ボランティア事業を担当。地域日本語教育推進事業総括コーディネーターも担う。

吉留 富子(よしどめ とみこ)/ ポルトガル語  2019年認定 

私はブラジルへ移民した日本人の両親のもとで生まれ育ち、1990年に来日しました。
日本へ来てまもなく通訳翻訳の仕事に就いたものの当時は特別な資格も経験もなくコミュニティーの役に立ちたいという思いだけでした。工場で務める方の連絡事項の翻訳、病院、役所への同行通訳を主に行っていた私は、転職に伴い教育、行政、司法、医療の分野で経験を得ることができました。しかし、自分のスキルの程度も分からない状態で不安なこともありました。
2019年に相談通訳認定試験に合格しました。今までの経験が認められた事により、新たな気持ちで橋渡し役の任務に専念する良い機会となりました。
相談通訳を自己流で行うのではなく、資格を得て質の良い相談通訳を提供することがこれから益々望まれると思います。多くの方が取得できることを願っています。

浜松国際交流協会(HICE)にて在住外国人のメンタルヘルス相談員及び精神科・発達医療機関等への同行通訳、法律相談・行政書士相談・税務相談業務に携わっている。

 岩田 久美(いわた くみ)スペイン語  2017年認定 

弁護士との相談通訳や医療通訳を行う中で、こころの病を抱えているケースなどに対応する機会があり、コミュニティ通訳(相談通訳)における医療分野の通訳と、一般の医療通訳の活動範囲のすみ分けをはっきりさせるべきではないかと感じるようになりました。境界をはっきりさせることにより、通訳としてどちらの立場で対応するかが明確になり、また通訳を頼む人々にとってもメリットがあると考えます。

大阪外国語大学イスパニア語科卒業。在日チリ大使館勤務後、JICA(国際協力機構)研修監理員として、通訳業務を担当。1992年よりフリーランス通訳として主にビジネス通訳に従事。1992年よりフリーランス通訳として主にビジネス通訳に従事。2011年、東京外大多言語・多文化教育センタ「コミュニティ―通訳コース」第2期修了後、2012年より外国人のための専門家相談会、弁護士事務所での相談通訳を担当し、2017年からMICかながわ医療通訳として活動。 2020年4月より、東京都外国人新型コロナ生活相談センター(TOCOS)のバックアップ通訳として電話通訳を担当。

 三木 紅虹(みき こうこう)/ 中国語  2017年認定 

今後も在住外国人の人数の増加、永住など長期滞在の増加、国際結婚で多文化家庭の増加、外国人労働者の増加など考えられる。同じ生活者と労働者として、同じ医療・福祉・教育など行政サービスを受ける権利がある。そのため、質を保証された言語支援が重要である。私たちの活動を通して相談通訳・コミュニティ通訳の質の向上、社会的認知度の向上を目指したいと思う。

これまでの活動について、横浜市国際交流協会所属の多文化共生センターの相談員兼コーディネーターを8年間勤めながら、NPO法人MICかながわにて医療通訳兼コーディネーターを続けていた。相談通訳者の認定を受けた後、関東弁護士連合主催の外国人無料相談や神奈川県内で外国につながる子どもたちの高校進学支援をしているNPO団体の活動にも参加し、教育相談および在留資格に関する相談にかかわっている。横浜市嘱託職員として生活保護や精神保健福祉関連の相談通訳もかかわっている。一般社団法人日本公共通訳支援協会にも参加して、主に医療通訳の普及・育成のために全国各地の機関団体主催の研修講師を務めた。

 宮城 京子(みやぎ きょうこ)/ 英語  2017年認定 

私は現在、東京都保健医療情報センターひまわり外国語対応室、AMDA国際医療情報センター、外国人総合相談センター埼玉で英語電話相談員をしています。また、入管や弁護士会、遠隔医療通訳会社に登録してタイミングが合えばそれらの通訳者としても活動しています。相談通訳の醍醐味は、相談をいかにスムーズに有意義なものにできるかを瞬時に考えながら、専門家と相談者をつないでいくことです。言語サポートにより充実したコミュニケーション成立の役に立てることは一番の喜びだと感じています。一方、専門家の話を理解し分かりやすく伝えるためには、言語のみならず、その分野の基礎知識があると役に立ちます。そのため勉強は欠かせませんが、何より相談がうまくいったときの外国人の方の笑顔を見るときとてもうれしく温かい気持ちになります。みなさんもぜひ相談通訳の仲間になって活動してみませんか。

東京都保健医療情報センターひまわり外国語対応室、AMDA国際医療情報センター、外国人総合相談センター埼玉・英語相談員

 山浦 育子(やまうら いくこ)/ 中国語  2017年認定 

 「ファーストペンギン」って知っていますか?集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのこと。転じて、その“勇敢なペンギン”のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、米国では敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます。(出典:ネット)
 私はそこまで勇敢ではないが、初めてのことを挑戦することはよくあります。思いを起こせば、現在多文化共生に取組みになるきっかけは、2010年東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター(当時)主催の「コミュニティ通訳」講座を1期生として受講したことです。そこでたくさんの専門知識を学び、受講後は法律相談の通訳を実践の場として提供されて、経験を積んできました。2017年に東京都国際交流委員会が主催の「多文化共生コーディネーター」講座も1期生で、またこの機構に最初に認定していただいた相談通訳者の一人です。2018年総務省主催の「災害時外国人支援情報コーディネーター研修」も1期生でした。特に1という数字にこだわっている訳ではありませんが、結果的にそうなってしまいました。
 30年前に日本に来た時は、やはり色んなところで苦労をしました。同じ国の方に同じ苦労をさせたくない思いが強いかもしれません。 今回新型コロナウィルス対応として、区内在住の中国の方に、情報発信し、拡散してもらいました。また、WeChatでグループを立ち上げ、メンバーは主に全国各地で相談員をしている方や国際交流推進員の方10名になります。グループ名は「風月同天」で、公の情報(中国語)を発信し、共有をしています。 皆さんもリスクを恐れず初めてのことに挑戦してみてはいかがでしょうか。

NPO法人CINGA会員、中国語通訳者、多文化共生マネージャー、NPO多文化共生マネージャー全国協議会理事

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〈多文化社会コーディネーター〉

 中野 玲子(なかの れいこ) 2022年認定 

在留外国人数の増加に伴い、多文化社会に関する議論が活発になっています。けれども、私は、「数」の問題で多文化社会を志向するのではなく、「楽しいから」または「well-beingだから」多文化社会を志向したいと思っています。
 私の多文化社会への関心は「すみだ日本語教育支援の会」からスタートしました。日本語教育を軸にした関わりを続ける過程で、各個人が多文化を楽しむこと、well-beingに活動することが、自己肯定感や自己効力感に繋がり、楽しいコミュニティ造りに繋がると考えるようになりました。
そして、今は地元東京都江東区で「日本語みらいラボ(深川)」を主宰し、多文化の楽しさを伝え、個人がwell-beingに多文化を楽しむための活動をしています。日本人住民も外国人住民も、一人でも多くの人が多文化に関心を持ち、多文化の良さを味わい、楽しんで関わることで、みんなの力が自然に集まってwell-beingな地域を作るというのが目標です。多文化社会コーディネーターとして何ができるか思考し、様々な分野の人と協働し、地域のみなさんと共に試行錯誤をしながら、成功も失敗も楽しんでいこうと思います。
外国の文化の他にも多様な文化に関わる多文化社会コーディネーターのみなさんとの実践や省察の共有を楽しみ、専門職としての活動の幅が広がることを願っています。

すみだ日本語教育支援の会 理事/ 日本語みらいラボ(深川) 代表


 新居 みどり(にい みどり) 2022年認定 

 多文化社会におけるコーディネーターについて研究し始めたのは2004年からだったと思います。国際交流協会で働く職員の専門性とその形成の方途について、実際のコーディネーターさんたちに色々お話をきいたり、記述されたものを読んだりしながら研究をし論文にまとめました。
 私は研究のプロセスを経て、国際交流協会のコーディネーターになるという夢を持ちましたが、2000年代、国際交流協会の組織継続さえもとても難しい時代でもあり、結局それは叶うことはありませんでした。縁がつながり、いまNPO法人のコーディネーターとしてはたらいています。多文化共生社会の実現を目指す市民活動・ネットワーク組織において、コーディネーターを仕事にできる喜びを感じながら、多くの同僚コーディネーターたちと一緒に活動してます。この認定を受けることは、私自身のためでもありますが、同時に未来のコーディネーターのために、多様な認定者がいた方がよいと思ったからです。仕事にするのはまだまだ厳しい領域であると思いますが、しかし、いま社会に求められている専門職でもあると思います。この領域で一緒にはたらく仲間が増えていくことを願っています。

NPO法人国際活動市民中心(CINGA)コーディネーター

 長尾 晴香(ながお はるか) 2019年認定 

 私は2010年に「Vivaおかざき!!」を日本人と日系アルゼンチン人の3人で立ち上げ、愛知県岡崎市を中心に草の根で活動を行ってきました。外国人向けに防災・教育のセミナーや日本語教室、日本人住民と外国人住民をつなぐ人材育成事業などを行う中で、コーディネーターとしての視点を持つ重要性を感じるようになりました。次々に見えてくる課題を前に、自分たちは何をすべきなのか悩む中、多文化社会コーディネーター協働研修に参加をして、自分が今まで見えていなかった多くの視点に気づくことができました。
 研修でテーマにした外国人労働者の就労・キャリア支援の分野で事業を展開するため、2018年に「株式会社link design lab」を設立し、地域と就労の両面から多文化社会の実現に向けて活動を続けています。自分ができることは限られていますが、「コーディネーター」という視点を持つことで、地域やリソースをとらえ直し、どんな動きができるのかを考える大きな助けになっています。
 地域の多文化共生の実現のため、多文化社会コーディネーターの重要性が認知され、全国各地で活躍するコーディネーターが増えていくことを願っています。

Vivaおかざき!!・代表/株式会社link design lab・代表取締役

萬浪 絵理(まんなみ えり2019年認定 

 私は国際交流協会の地域日本語教育コーディネーターとして、日本語教室や支援者研修の企画、日本語教育体制整備に携わっています。試行錯誤の6年前、多文化社会コーディネーターの実践研究論文から多くの視点と気づきを得るとともに、実践発信の意義を知りました。認定は発信の励みになると思います。
 「日本語教育の推進に関する法律」によれば、推進の目的の一つは「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現」です。日本語教育を「外国人に日本語を教えること」と狭く捉えると、多文化共生社会の実現促進と相容れないようにも見えてしまいます。地域日本語教育はすべての市民とともに創っていくもの。「日本語教育」の意味をずらし、多様な人々の参画を促すために、地域日本語教育コーディネーターには「多文化社会コーディネーター」の資質・能力が強く求められる、と経験から感じています。 
 コーディネーターの醍醐味は、新しいことを構想し、目に見える形にしていくことでしょうか。多様な価値観に寄り添いながら、軸はぶれずに。これが難しい!信念や思いが単なる「ひとりよがり」になっていないか。社会や他者だけでなく、自身を俯瞰する能力も問われています。

千葉市国際交流協会委嘱日本語教育コーディネーター

 菊池 哲佳(きくち あきよし) 2017年認定 

私が認定試験にチャレンジしたのは、国際交流協会の職員には多文化社会コーディネーターの役割が求められると考えたからです。私は2000年に仙台国際交流協会に入職して以来、外国人相談事業や防災事業を担当し、やがてそれらを「業務」としては何とかこなせるようになったものの、業務をこなすだけではなく、これから国際交流協会の職員としてどのような役割を果たしていくべきかを考えるようになりました。同時に、自分の仕事の質に自信が持てず、悶々とする時期がありました。そのようなときに、「多文化社会コーディネーター」の専門職像と出会い、国際交流協会職員はまさにこれだ!と思いました。その後、多文化社会コーディネーターについての講座や研究会に参加する中で、全国各地の実践者と出会い、彼らの姿に励まされもしましたし、また自らの専門性を高める方法として「省察」の必要性を実感しました。 私は地域の「多文化共生」を推進していくためには、全国各地で多文化社会コーディネーターの役割を果たす人びとの存在が欠かせないと思います。全国各地で「同志」が生まれ、活躍することを認定者のひとりとして願っています。

仙台多文化共生センター センター長(公益財団法人 仙台観光国際協会)、一般社団法人 多文化社会専門職機構 事務局長、認定NPO法人 日本ボランティアコーディネーター協会理事、慶應義塾大学SFC研究所 上席研究所員

 北村 祐人(きたむら ゆうと) 2017年認定 

認定試験を志したころ、私は愛知県豊田市が名古屋大学と共働で運営する「とよた日本語学習支援システム」のシステム・コーディネーターをしていました。そこでは、市内の各地で企業内日本語教室を運営したり、公営住宅の集会所で住民のための日本語教室を運営したりと、豊田市における日本語学習の機会を整えるための仕事をしていました。長年、「コーディネーター」という名前で仕事をしていましたが、当初はコーディネーターが具体的にどのような仕事をするのか、役割を果たすのか明確に分かっていませんでした。 そんな私が多文化社会コーディネーターを志したのは、コーディネーターとしての力量を向上させたかったからです。そのうち、多文化社会コーディネーターとして働く仲間たちと議論していると、コーディネーターがどのような役割を果たし、地域でどのように機能していくのかが分かってくるようになりました。また、認定試験受験をきっかけに、「なぜ自分がコーディネーターとして働くのか」「自身のコーディネーターとしての力は何か」を自分自身に問い、自分のコーディネーターとして能力について深く考えるようになりました。それからは、どのように関係者と対話をし、日本語教室での活動を設計していくか、日本語教室を運営することで我々が社会にどのようなインパクトを与えられるのか、狭義の「教室」にとらわれず、事業としてどのように教室を見つめられるか考えることができたように思います。現在はコーディネーター職を退いていますが、そこで得た視点は重要なものだったと感じています。

元とよた日本語学習支援システム システム・コーディネーター

 髙栁 香代(たかやなぎ かよ) 2017年認定 

私は長年外国人が点在する地域での草の根での活動を続けてきました。日々目の前の課題を解決することに追われ、対処療法的な解決が続くことに不安と限界を感じていた時に「多文化社会コーディネーター」の実践研究を知りました。私にとって認定までの道のりは決して平坦なものではありませんでしたが、多文化社会に向き合う覚悟を自覚させてくれた貴重な機会でした。
 認定後は多文化社会専門職機構を通して知り合った多文化社会の問題解決に取り組む各地の実践者や研究者とつながることで、地方都市で孤独感を感じることなく実践に取り組めています。そして、多文化社会コーディネーターとしての学びも継続できています。私の実践はとても小さなものですが内実のある実践になるよう努力を重ねていきたいと思っています。
 今日、地域の多文化化は地方都市の小さな集落でも急速に進んでいます。誰も置き去りにされることなく、誰もが力を発揮することのできる多文化社会を実現するために欠かすことのできない「コーディネーション」は今後も必要とされるでしょう。それを担う専門職である認定多文化社会コーディネーターが各地で増えてほしいと願っています。

多文化designコンパス代表

 松尾 慎(まつお しん) 2017年認定 

専門は、日本語教育、多元文化教育です。ブラジル、インドネシア、台湾で日本語教育に携わり、2009年より東京女子大学に勤務しています。日本語教員の養成の他に学生と地元(西荻)を結ぶ活動を教育委員会や地域の方々と連携して行っています。また、2014年、難民当事者とともに難民の日本語教室・活動(Villa Education Center)を立ち上げ、毎週日曜日、大学院生や修了生、学部生とともに活動を継続しています。先日、250回を数えました。この活動ではすべての参加者が学び合える活動をデザインしています。2020年にこの活動を正式に任意団体として立ち上げました。様々な活動に関わっていますが、こうした活動をデザインし、実施していくためには、コーディネーター的な視点や力量が必要になると考えます。また、多文化社会コーディネーターとしての学びを深める過程で、日本語教育の世界にいただけでは出会えない多くの仲間と知り合うことができました。日本語教育の世界でもコーディネーターの果たす役割が注目されています。新たなコーディネーター仲間に出会いたいと思います。皆さんを歓迎いたします。是非、実践とその省察を共有し合いましょう。

東京女子大学教授、Villa Education Center代表理事

 松岡 真理恵(まつおか まりえ) 2017年認定 

現職の前に、(財)豊田市国際交流協会で働いていた時期もあり、ずっと国際交流協会という特殊な業界に身をおいています。こんなに小さな世界にだけいていいのだろうかと思った時もありましたが、常に現場で生身の人間とふれあいながら次々と立ちはだかる課題に向き合ううちに、現代社会の最前線にいるのかもと思うようになり、むしろ、この道を究めようと、多文化社会コーディネーター研究に関わるようになりました。
多文化社会コーディネーターの専門性を可視化して社会にその必要性を示していく使命感を感じながら、現在も日々現場であがいています。多文化社会コーディネーターの輪が広がるよう、活動を続けていきたいと考えています。

公益財団法人浜松国際交流協会 事務局次長、多文化社会コーディネーター